はしがき
野球選手は野球のルールを知っています。サッカー選手はサッカーのルールを知っています。しかし、ルールを知っているだけでは野球やサッカーはできません。少なくとも一流選手にはなれません。では何が必要でしょうか。それは毎日の練習です。スポーツであれ、音楽であれ、一流のパ
フォーマンスを見せることが出来る人は血のにじむような練習を続けているのです。バットを手にして素振りをする。ボールを蹴って技を磨く。鍵盤をたたいてメロディーを奏でる。プロの選手がよく口にします。「練習は裏切らない!」
勉強も同じです。読書量の多い人は表現力も豊かです。数学の問題も慣れてくれば解き方が見えてきます。英文をたくさん読んだ人には英文の流れが見えてきます。どこまでが主語で、動詞はどれか、目的語や補語が何なのか、不定詞がどんな働きをしているのか、理屈抜きに見抜くことができるようになります。それが「慣れ」の成果です。もちろん文法の知識は大切です。みなさんは学校の授業で様々な英文法のルールを学んだはずです。不定詞の様々な働きや比較表現、仮定法表現など知っています。しかし、文法書はルールブックです。ルールブックを何度読んでも、それだけで英文を読める力にはなりません。知識を生かして練習することが大切なのです。たくさんの英文を読むこと
が英文読解の練習なのです。それによって身についた「慣れ」は最強の武器になります。
「たくさんの英文を読む」とは、「たくさんの異なる英文を読む」ことと理解する人が多いでしょうが、私はむしろ「同じ英文を何度も読む」ことをお勧めします。自分の力でどうにか読める英文を何度も繰り返し読んでみてください。2回、3回ではなく、10回・20回読んでみてください。新聞のニュースなどの情報収集なら1回読むだけでも十分でしょう。しかし、読解力を高めるための
readingは「練習」です。バットの素振りやサッカーのボール、ピアノの鍵盤と同様に、同じ事を何度も繰り返すのです。わかったから終わりではなく、何度も読むのです。何度も読むうちに、英文の自然な流れが身につきます。さらに日本語を見て自然に英文が浮かんできます。結果的に英作文の力も身につくことが期待できます。信じるか信じないか、答えは「実践」して初めて分かるでしょう。
Practice makes perfect!
このテキストにはみなさんの興味・関心を引きそうな英文を並べました。楽しみながら英文を読んでみてください。そして、何度も読んでください。繰り返し読むことで読解力が向上します。それが本書のタイトルにある Spiral Reading の意味です。
2021年春 編著者